就労移行支援に通いたいけど、どれくらいの費用がかかるのか?
その間の生活費が心配という方は多いのではないでしょうか。
私がサビ管としてこれまでに300人以上と関わってきた中で、多い悩みの1つが「生活費をどうやりくりするか」です。

お金が減っていくのはとても不安になるよね
お金の問題は誰にとっても切実な悩みです。
では、実際に就労移行支援に通っている利用者さんたちは、どのように生活費をやりくりしているのでしょうか。
今回は就労移行支援の利用中にかかるお金と、生活費のやりくりにおいて4つの代表的なパターンとその他の方法を紹介します。
この記事を読むことで以下のことが分かります。
・就労移行支援を利用中にかかる費用が分かる
・生活費のやりくりのパターンが分かる
・お金を捻出するために利用できる制度が分かる
結論として、ほとんどの方は1ヶ月あたり0円〜20000円程度で考えておくとよいでしょう。
その理由はこのあと詳しく解説していきますね。
就労移行支援の利用にかかる費用は人それぞれ
就労移行支援を利用することでかかる費用は主に以下のとおりです。
金額に幅があるのは、人それぞれの状況やお住まいの地域、通っている事業所のサービス内容によって異なるためです。
一つの目安としてご参照ください。
利用料は0円〜最大でも22000円程度
利用料は負担上限額と就労移行の利用回数によって異なり、前年度の世帯※1の課税所得によって負担上限額が4つの区分に分かれます。
※1:世帯には子や親は含まれず、本人もしくは本人+配偶者をひとつの世帯とみなします。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯 | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外 | 37,200円 |
参照:障害者の利用者負担https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/hutan1.html
負担上限額とは1ヶ月でかかる最大金額のことで、上限額以上の利用料は発生しません。



負担上限額が毎月全額かかるわけではなく、1ヶ月の利用回数によって利用料は変わります。
前年度まで働いていた方や配偶者の収入がある方は負担上限額9300円もしくは37200円になるケースがあります。
この区分の方は負担額について通所している事業所、もしくは自治体に確認することをオススメします。
ちなみに、就労移行に通っている8割以上の方が「負担上限額0円」、すなわち利用料はかかっていません。
利用料はややこしいので、「多くの人は0円で利用している」という認識で大丈夫です。
交通費は0円〜通所距離によって変動
交通費は自治体から更生訓練費という名目で全額もしくは一部支給されたり、事業所によって一部もしくは全額補助してくれるケースがあります。
事業所見学の際に交通費の補助があるか必ず確認しましょう。
障害者手帳を持っていると交通費が安くなることがあるので、お使いの公共交通機関にお問い合わせください。
昼食代は0円〜10000円程度
利用者満足度を高めたり、食生活の改善をサポートしたりする目的で昼食を無料で提供している事業所も多く、有料の場合は300円程度が相場です。
コンビニで買ったり外食をしたり、ご自分で弁当を用意することで変動するため、利用を考えている事業所の昼食提供について確認しましょう。



交通費・昼食代無料を売りにしている事業所もよくみかけるよ
その他は0円〜5000円程度で不定期に発生する
その他の費用は毎月かかるわけではなく、必ず必要ということもありません。
想定されるその他の費用は、診断書、飲み物代、レクリエーション代、実習時にかかる交通費・保険代、資料代、資格試験代などです。
事業所の支援スタイルや方針によって、資格取得の補助金を出してくれることがあり、自己負担が変わります。
事業所の見学時に、利用料・交通費・昼食代以外にかかるコストについて確認しましょう。
飲み物代も積み重なると大きな額になるため、まとめ買いや水筒持参するとコストカットになりますよ。



ドリンクサーバーの設置や飲み物の提供を行っている事業所もありますよ
代表的な4つのパターンは貯蓄・年金受給・家族支援・生活保護
ここまでは就労移行支援にかかる費用について解説しました。
この費用をやりくりするために、これから紹介する4つのパターンを併用している利用者さんがほとんどです。
代表的なパターンはこちらです。
・貯蓄を切り崩す
・障害年金の受給
・家族からの支援
・生活保護申請の4つ
① 貯金を切り崩す
第一選択肢として考えられる手段です。
これまでの貯金を切り崩しながら、②・③を併用しているケースが多いです。
もともと一人暮らしをしていた方が実家に戻り、昼食代や交通費、趣味代を貯金から支出しているという話も聞きます。
②障害年金を受給する
多くの方が活用しているのが「障害年金」です。
精神障害や発達障害、知的障害などで、働くことが難しいと判断された場合に、年金として一定額が支給されます。
たとえば、障害基礎年金2級なら、年額約80万円(月に約6.6万円)。生活費としては決して余裕のある額ではないものの、実家暮らしであれば生活を送ることは可能です。
注意点としては、受給までに時間がかかることです。
医師の診断書や初診日の確認など、手続きが複雑なため、「申請したけど結果待ちが長い」「書類の不備で再提出が必要になった」というケースも少なくありません。
また、申請しても却下される可能性がある点も注意が必要です。
事業所によっては知り合いの社労士を紹介してもらえるケースがあります。
依頼料はかかりますが、書類作成の手間や受給決定につなげるために社労士に依頼するのが無難です。
③ 家族からの支援を受ける
親からの仕送りや実家に戻ることで、家族から生活費を出してもらうケースも多いです。
他の手段を使えない場合、家族の支援がライフラインになることも少なくありません。
「申し訳なさ」や「早く自立しなければ」というプレッシャーを感じる方が多く、家族から「就職はまだなのか?」「支援するのは1年だけ」と焦らされるケースもあります。



なかなか自分から支援をお願いするのは勇気がいるよね



期間を決めて伝えたり、事業所の見学に同行してもらうケースもありますよ
④生活保護を受ける
1〜3の手段がとれない場合に選択されるのが生活保護です。
生活保護は最低限の生活を保障するための国の制度であり、障害や病気で働くことが難しい人も対象になります。
自治体によって基準は異なりますが、単身世帯で月10万円以上の支給や家賃扶助や、医療費の免除が受けられます。
さらに前述した通り、就労移行の利用料は0円です。
ただし、申請時に両親や兄弟といった扶養義務者への照会、資産調査などが行われるため注意しましょう。
その他に生活費をやりくりする方法・制度
自治体からの許可を得てアルバイトをしたり、国や行政の制度を利用してお金を借りられる方法がいくつかあります。
最終的な判断は自治体になるため、窓口でご確認ください。
・アルバイト
就労移行支援を利用しながらアルバイトを行うためには自治体からの許可が必要です。
就労移行支援の利用に差し支えない、体調が安定している、他に方法がないため短時間の就労、といった場合に認められるケースがあります。
自治体の判断によっては「アルバイトは認められない」となるケースもありますのでご注意ください。
詳しくはこちらの記事をご参照ください。


・社会福祉協議会の生活福祉資金貸付制度
低所得世帯、障がい者世帯、失業者世帯などを対象に、低利または無利子で資金を貸し付け、相談支援を併せて行う制度です。
総合支援資金、緊急小口資金など、用途によって貸付タイプが異なります。
必要な書類をそろえて提出→審査→貸付決定となります。
受取に時間がかかったり、不承認になったりする場合もあります。
詳しくはお住まいの地域の生活福祉資金貸付制度をご確認ください。
・生活困窮者自立支援制度
この制度は「仕事が見つからない」「働けない」「家賃を払えない」「住むところがない」など、様々な理由で生活に困っている人を対象にしています。
窓口は自治体の福祉課や生活福祉課です。
相談、就労支援・住居支援・家計改善など複合的な支援を受けられます。
お住まいの地域によって内容に違いがありますが、主に以下のような取組みがあります。
- 自立相談支援事業
- 住居確保給付金支給
- 就労準備支援事業
- 家計改善支援事業
- 一時生活支援事業



相談も出来るのは心強いね



困っている時は遠慮なく頼っていきましょう
特に条件はありますが、住居確保給付金は「給付」のため、貸付金と違って返済不要なのはありがたいですね。
・市区町村独自の緊急貸付制度
市町村が独自で設けている貸付制度です。国の制度では対応しきれない緊急資金をカバーする目的があります。
例えば、大阪市では「緊急援護資金」という名目で10万円を借りられます。
国立市では「不動産担保型生活資金」「臨時特例つなぎ資金」などを実施しています。
このような独自の貸付制度は、自治体によって内容・金額の上限・利子の有無・返済条件が大きく異なるため、まずはお住まいの自治体に確認しましょう。
まとめ
就労移行支援の利用中にかかる費用は主に、
・利用料
・交通費
・昼食代
・その他
1ヶ月で0円〜20000円程度と考えておくとよいでしょう。
実際に就労移行を利用している方は貯蓄・障害年金受給・家族支援・生活保護の4パターンで生活費をやりくりしています。
その他にも利用できる制度が自治体ごとで用意されているため、自治体の福祉課や生活福祉課に問い合わせることをオススメします。
利用者さんから、
「生活費の不安があるから訓練に集中できない」
「家賃を払えないからとにかく就職したい」
といった話の相談を受けることがあります。
働くためにもまずは生活とお金の基盤を整えることが大切です。
本記事がお金の不安を軽減することにつながっていたら嬉しいです。




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